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電源選びのポイント
1. ATX2.01〜ATX12Vまでのバージョンの移り変わりの背景
  2. Intelが提示したPentium4に対しての電源の必要条件
  3. 電源の高調波抑制について(PFCの搭載)
  4. 電源選択のポイント(総括)
  1. ATX2.01〜ATX12Vまでのバージョンの移り変わりの背景 2002.07.01
 

PCの電源としてATからATXに移り変わった時に、それまで電源は各内部機器へ単純に電気を供給するだけの存在だったものが、ATXでは各機器の要求(電気信号)に答えながら電気を供給する存在になった。
特にPCの電源ON/OFF時には、まずマザーボードにON/OFFの指令が送られ、そこから電源に指令が送られて供給する電気をON/OFFするようになった。
ATでは、「電源」はあくまで「電気を供給するだけ」だったが、ATXでは「要求に応じて電気を供給する」、言わば「デバイスの一つ」になったと言っても過言ではない。
電源は、家庭用コンセントから来たAC(交流)電気をDC(直流)電気に変換し、更にそれを+5V等の各機器が使用できる電圧の電気を作り出している。つまり、電源とはPCにとって「配電盤」なのである。
諸兄は電源をコンセントのように考えてはいないだろうか。
ATの頃は確かにスイッチ(電源本体の)が入ると、電気を供給するだけの「一方通行」でしかなかったので、そう捉えても間違いではないかもしれない。しかしATXでは、要求に応じて電気を供給する「双方向通行」なのである。 双方向通行である以上、機器からの信号をマザーボードを介して受け取っているので、信号のタイミングや速度等も関連するようになった。ATXに切り替わってから急速に各機器、特にCPUの技術・速度向上に比例して、消費電力も大きくなってきた。
ついにCPUクロックが1GHzに達するといった時に、それまで定められていた電源の規格スペックでは、対応しきれなくなると判断され、それまでのATX規格であるVer2.01からVer2.03への移行が決定された。 このATX2.03について、Intelは第7世代CPUであるPentium4への対応も見据えて策定されていたが、ある部分のスペックを達成できるコンポーネントが存在しない事が判明した。
そこでIntelは新規格である「ATX12V」を制定した。 この「ATX12V」の位置付けは、ATX2.01のローカルバージョンアップではなく、ATからATXに移り変わったようにATXからATX12Vと移り変わったものである。

 
  2. Intelが提示したPentium4に対しての電源の必要条件 2002.07.01
 

つい最近まで、IntelはPentium4に関する技術資料、クロックごとの消費電力や使用環境(電源やM/B等)に関する情報は、全て英語でしか掲示されていなかった。
しかも、デベロッパ向けのページで公開されており、一般の人はそのページのURLすら入手できなかった。
しかし、最近になって日本語サイトにてこれらの事が公開され始めた。
これによると、Pentium4を使用するシステムの電源は、「ATX12V パワーサプライデザインガイドラインに準拠しているものでなければなりません」と明記されている。
→ http://support.intel.co.jp/jp/support/processors/pentium4/p4comp.htm (DEAD LINK )
※423pin及び478pinパッケージについてそれぞれ「電源装置の選択」項目参照。
つまり、ドライブ用のコネクタから12Vコネクタを作り出す等の変換コネクタは、ナンセンスという事になるのである。
ここで指す「ATX12V パワーサプライデザインガイドライン」とは「ATX12V PowerSupplyDesignGuide」の事で、Intelを筆頭に結成された「DesktopFormFactors」という団体が定めており、Web上で公開されている。(英文)
→ http://www.formfactors.org/ (DEAD LINK )
ここでは、電源の他にもマザーボード等のフォームファクターも定めている。
なお、このデザインガイドの最新バージョンであるVer1.2が、最近公開となった。
このVer1.2において、Ver1.1から大きく3箇所が変更となった。
1つは、+5Vラインのミニマム電流が0.1Aから0.3Aになった点である。
本来ミニマム値は、小さければ小さい程良いのだが、逆行している。
これの理由は、0.1Aで定めたのはいいが技術的にかなり難しい事が分かり、実際に実現できている電源メーカーがほとんど無かった為である。
2つ目は、PS_ON#シグナルのタイミング値を追加した点である。
電源をスイッチをONにした時に電源はマザーボードに「これから電気を流す」というシグナルを送るのだが、Ver1.1までは電圧値が0〜95%まであがる際にかかる時間については、500ms未満と定めていたが、シグナルのタイミングについては定めていなかった。しかし、Ver1.2で10ms〜100msという値を定めた。
これは、Pentium4が0.13μプロセスルールになり、シグナル等のタイミングの要求がシビアになった結果、今までの仕様では起動しないという現象が多く起きたからである。
3つ目は、-5Vラインの削除である。
-5VラインはもともとISAスロットぐらいにしか使用されていなかった。
最近ではISAスロットは過去の物となり、現行のM/Bでは搭載されたものは 皆無に等しい。
従って、-5Vラインは削除しても問題ないとの考えから、Ver1.2では-5Vラインは、あってもなくてもよい」となった。

 
  3. 電源の高調波抑制について(PFCの搭載) 2002.07.01
 

ATX12V パワーサプライデザインガイドラインにて、電源高調波電流の抑制について表記されてる。(ヨーロッパと日本向けのみ)
更に、Ver1.2では具体的な数値も表記された。
一体この「電源高調波電流」とは何なのだろうか?
この「高調波」をJISで調べてみると、「周期的な複合波の各成分中、基本波以外のもの。第n次高調波とは、基本周波数のn倍の周波数を持つもの。」(JIS Z8106「音響用語(一般)」より)及び、「基本波の整数倍の周波数をもつ正弦波」(JIS Z9212「エネルギー管理用語(その2)」より)となっています。
つまり「電源高調波電流」とは、「電源に流れる高調波電流」という事であり、 基本波(50Hzまたは60Hz)の整数倍の周波数をもった正弦波電流なのである。 (例:100Hz 150Hz 200Hz ,120Hz 180Hz 240Hz)
ここでいう「電源」とはパワーサプライの事ではなく、家庭用コンセントの事を指す。
この高調波電流は、機器にとって有害なものであり、時には電源回路のコンデンサを破裂させる事もある。
しかも、この高調波は繋がっている回路全てに影響を及ぼす危険性もあるので、コンセントで繋がっている他の機器や、最悪の場合発電所から来ている送電線にまで影響を及ぼす場合もある。
更に、高調波成分の含まれた電流は不安定な為、それをDCに変換するとそのDCも不安定となり、各機器の動作を不安定にしたり、時には電源が入らない等の現象も起こり得るのである。
現在、この「電源高調波電流」についてヨーロッパでは規格化され、ある水準をクリアしたものでなければならない。最近日本でもこの動きが出始め、「家電・汎用品高調波抑制ガイドライン」として通商産業省より公開されている。
この高調波電流の抑制には、大きく分けて「アクティブ(能動的)回路」によるものと、「パッシブ(受動的)回路」によるものの2つがある。一般的には、アクティブ回路によるものが採用されている。その中でも最近多いのが「アクティブPFC」による高調波抑制である。
PFCとはPowerFactorCorrectionの略であり、その名の通り「力率改善」である。
(PowerFactor=力率,Correction=改善または修正)
PFCの採用により、高調波抑制レベルを上げると共に力率も上げる事ができる。しかも、PFCは非常に高い(90%以上)力率の実現が可能である。
この力率とは、電力の有効成分の比率であり、力率が高ければ高い程(100%に近い程)、電力の無駄遣いを削除して省エネ効果を促す事ができる。しかも、流れる電流値が低くなるので送電の際の負担も軽くする事ができるのである。
参考までに、力率改善をしていないPC用電源の力率は約60%で、Topower社製PFC電源は力率約99%を実現している。
つまり、PFCを搭載するメリットは電源の性能の向上の為でなく 安全面における強化が主なのである。

 
  4. 電源選択のポイント(総括) 2002.07.01
 

上記であげた通り、電源には幾つかのポイントがある。
1つは「品質」で、これはATX12V パワーサプライデザインガイドラインしかもVer1.2に準拠している事、すなわちPFCの搭載、PS ONのシグナルタイミングが10ms〜100msをクリアしているものが基準としてあげられる。
具体的には、Pentium4 1.6AGHz,1.8AGHz,2AGHz,2.2 GHz以上のCPU(Northwood)を使用した場合、「ATX12Vパワーサプライデザインガイドライン Ver1.2」をクリアしていない電源を使用すると起動すらしないという現象が起こりえるのである。
しかし、現在市場で売られているものの中には、クリアしていないのに安全規格の表記をしているものも少なくない。安いからといって安直に買ってしまうと、安物買いの銭失いになる可能性もある。
かといって、むやみやたらに高いものを買えばいいという事でもない。
電源は、まず安全に気を配るべきである。きちんとした規格に準拠し、PFCにより高調波抑制および力率改善されたものを選ぶのがベストである。力率もより高いものを選んだ方がよいだろう。
2つ目は「容量」である。
これは当然といえば当然なのだが、最近ではどうも電源の大容量化ばかりが先行しているように見られる。
しかし、ここで考えてみよう。本当に500Wや600Wの電源が必要なのだろうか。これだけの容量の電源は既にサーバークラスである。
電源を選ぶ際には、まずどんなシステム構成にするかを考え、それに見合った電源を選択するべきである。
最近Intelの日本語サイトでもPentium4の消費電力などが公開されている。
これを見ると、2.0GHzで75.3Wというのがあるのに対し、2.4GHzでは57.8Wとなっている。
これは、WillametteコアとNorthwoodコアの違いによるものである。つまり、消費電力はクロック速度に必ずしも 比例するとは限らないのである。
Athlonにも同じ事が言え、現行はPalominoコアだが近い将来、Thorougbredが発売されれば上記と同じような事が 起こるだろう。
Athlonの場合は、現在は消費電力に関する情報は英文ページにしか記載されていないが、比較的簡単に手に入れる事が できる。
CPUの消費電力は、+5Vと+12Vのラインにて供給されるので、電源のこの部分の容量を見るといい。
更に、HDDやCD-ROMドライブ等のストレージデバイスは、+5Vと+12Vのラインにて供給される。
このように、組み立てたいシステム構成と消費電力を考え、上手に電源を選んだ方がよい。
こうして計算してみると、300Wの電源でもPentium4 2.4GHzを動かす事は可能なのである。
しかし、Pentium4 2.4GHzを選ぶようなユーザーは、HDDを多く積んだり、グラフィックボードもハイクラスのものを 使う事だろう。そうなると、300Wでは足りなくなる可能性もある。
あくまで目安だが、個人レベルで使用するPCであれば400W前後の容量があれば十分だろう。
それと、このクラスになってくると気になるのが電源ファンの音である。
そこで、電源を選ぶ際に「静音」に気をとられ過ぎてはいませんか?しかし、最近では電源のほとんどがファンコントロールを搭載しているので、今や電源の静音性は当たり前のものなのです。
電源選びで重要かつ、高クロックのCPUを使用する時の注意として、電源の容量よりも品質を重視してほしいという事である。

 
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